Uターン転職を考えている人が知りたいのは、たぶん移住直後の感想ではありません。何年か住んだ後で、その人が今どう思っているかだと思います。
私が地元にUターン転職して人生は変わったか?を書いたのは、まだ戻って間もない頃でした。あの記事の結論は「プライベートはプラス、仕事はマイナス」で、最後はこう締めています。仕事面さえプラスに変えることができれば、地元に戻って本当によかったということにできそうだ、と。
2017年に石川へ戻ったので、あれから9年が経ちました。その間に休職して、退職して、転職しています。今ならあの宿題に答えられるので、今回は9年後の答えを書きます。
目次
1. 9年経っても、住んでいる場所は変えていない
まず事実から書くと、私は今も石川に住んでいます。
Uターン後に転職して勤務先は変わりましたが、勤務地は変わっていません。今はリモートで働いているので、住む場所を変える理由がそもそもありませんでした。
これは自分でも少し意外です。人生をSCRAP & BUILDだ!を書いていた頃の私は、経済的に困ってまた東京に戻ることになるかもしれない、くらいのことを考えていました。実際にはそうならず、地元に残ったまま仕事だけが入れ替わった形です。
Uターンで戻った土地に住み続けられるかどうかは、たいてい仕事の選択肢の少なさで決まります。私の場合はリモートという条件が後から効いた、というのが正直なところで、9年前に見通せていたわけではありません。
2. マイナスだった仕事の方は、プラスに変わった
地元にUターン転職して人生は変わったか?で仕事をマイナスと評価したのは、地方では人工知能に関わる仕事の母数が少なく、結局は都市部の顧客を相手にするので出張や転勤が発生する、という構造が理由でした。実際、そのままの流れで休職に至っています。
今は違います。同じ分野の仕事を続けていますが、環境が変わりました。詳しい経緯は休職後に復職・退職・転職を経験して考えたことに書いたとおりで、退職して4か月ほど無職をやってからAIベンチャーに移っています。
つまり、地元に戻ったことが仕事をマイナスにしたわけではなく、戻ったときに選んだ会社が合わなかった、という話でした。9年経ってみると、そこは分けて考えるべきだったと分かります。当時の私は「地元に戻ったせいで仕事がつまらなくなった」という説明に近い形で受け止めていましたが、実際には求人情報を鵜呑みにして選んだ結果の方が大きかったです。
3. 生きがいだったロードバイクには乗らなくなった
一方で、当時プラスと書いた方は消えました。
Uターン直後に書いた記事の中で、私はロードバイクを生きがいと呼んでいます。休日は天気さえ良ければ走りに行き、平日も週4で2時間ほど乗っていました。地元に戻る前後で10kg以上、いちばん落ちていたときは15kgほど体重が減っています。あの時点でプライベートがプラスになったと言い切れたのは、ほぼこれ一つの理由でした。
今は乗っていません。手放してはいないので、自転車自体は持っています。乗りたい気持ちもあります。それでも乗っていません。当然のように体重は戻りました。
これは正直、書いていてバツが悪いです。あのとき「これがあるから地元はいい」と言っていたものが、なくなっても地元に住み続けているわけですから。生きがいだと思っていたものは、そこまで強い理由ではなかったということになります。
ただ、そう分かったこと自体は悪くないと思っています。移住先を評価するときに、始めたばかりの趣味を判断材料の中心に置くのは危ないんだな、というのが9年分の実感です。
4. 不便だと思ったことは、意外となかった
地方に住むことの不便さについては、9年経って改めて困ったと思ったことがありません。
娯楽が少ないのは事実です。ただ、それは戻る前から分かっていたことで、想定どおりでした。想定していた不便が想定どおりに存在しているだけなので、不満にはなりません。もともと私は一人で過ごすことが多く、休日に出かける先が足りないと感じるタイプでもありませんでした。
むしろ効いているのは、地元だからという理由の安心感の方です。うまく説明できないのですが、何となく落ち着くという感覚があります。それと、親が近くにいることも大きいです。私が近くにいることで親の側も安心しているようで、これは戻る前にはあまり考えていなかった部分でした。
不便の話は事前に調べれば出てきますが、この手の感覚は住んでみるまで分かりません。Uターンを検討している人にとっては、比較しにくいぶん厄介な項目だと思います。
5. 宿題への答え
9年前の記事に戻ります。仕事面さえプラスに変えられれば、地元に戻ってよかったと言えるはずだ、というのが当時の条件でした。
仕事はプラスに変わりました。なので、答えは「言えます」です。
ただ、答え合わせをしてみると、当時の採点表そのものがずれていたことが分かります。プラスに数えていたロードバイクは消え、マイナスに数えていた仕事は会社を変えたら解決し、最後まで残ったのは点数をつけていなかった安心感の方でした。9年前の私が重要だと思っていた項目は、ほとんど入れ替わっています。
だから、これからUターンする人に「戻ってよかったですよ」と言うのは簡単なのですが、その根拠は9年前に私が挙げた理由とは別のものです。判断材料は住んでいるうちに入れ替わる、というのが今いちばん確かなところだと思います。逆に言えば、移住直後に出した評価は、良い方も悪い方もあまり当てにしなくていいのかもしれません。
当時の選択そのものに丸とバツをつけてみたのが7年後に人生の答え合わせをしてみたで、ITから離れることを考えて結局戻ってきた話はIT以外の仕事を考えて、結局ITに戻ってきた話に書いています。