「これくらいでいい」と伝えたのに、期待より簡素なものが出てくることがあります。受け取る側だけの問題とは限りません。この言葉は、最低限ここまで必要という下限にも、これ以上は不要という上限にも聞こえるからです。
曖昧な目安を渡したまま、相手が同じ意味で受け取ることを期待すると、最後になって認識のずれが表面化します。必要なのは気合いや察する力ではなく、最低条件と、余力があれば改善してほしい部分を分けることです。
目次
1. 同じ言葉が下限にも上限にもなる
仕事を渡す側が「これくらいでいい」と言うとき、頭の中には完成形があることがあります。その完成形を前提に、細かな部分は省いてもよいと伝えているつもりです。
受け取る側には、その完成形が見えていません。そのため、言葉にされた範囲だけを作れば完了だと解釈します。渡す側は最低線、受け取る側は停止線として同じ言葉を見ています。
どちらかが怠けていると決めつける前に、上下どちらの線を示したのかを確認する必要があります。
2. 前提が消えると、結論だけが残る
「急ぎなら、ざっくりでいい」「社内確認用なら、体裁は整えなくていい」という指示には条件があります。急ぎではなくなったり、社外へ出す資料に変わったりすれば、必要な品質も変わります。
ところが、作業中に条件が意識されなくなると、「ざっくりでいい」「体裁は不要」という結論だけが残ります。指示を出した時点と提出時点で前提が変わっている場合は、特にずれやすくなります。
3. 最低条件と改善余地を分けて伝える
「これくらい」という一言の代わりに、次の三つを分けます。
- 目的:誰が何のために使うものか
- 最低条件:必ず含める情報や満たす基準
- 改善余地:時間があれば追加してほしいもの
たとえば「社内の方針確認に使う。三案と費用の概算は必須。見た目の調整は不要」と伝えれば、内容の下限と作業しなくてよい上限を分けられます。
品質を上げてほしい場合も、「できるだけ丁寧に」ではなく、比較の根拠を追加する、第三者が読んで判断できる状態にする、というように確認できる形で伝えます。
4. 受け取る側も完成条件を言い直す
指示のずれは、提出直前まで待たずに確認できます。受け取った側が、次のように完成条件を言い直します。
方針確認用として三案と費用概算を入れ、体裁調整はしない状態で提出します。
相手の意図と違えば、この時点で直せます。「分かりました」とだけ返すより、何を作ると理解したのかが見えるため、双方の確認になります。
5. 提出物の形を先に合わせる
完成条件を文章だけで共有しにくい場合は、過去の提出物やテンプレートを先に見ます。最終的に必要な項目と粒度が分かれば、途中の報告もその形に近づけられます。
最後の納品物を見ないまま作業を進めた例は、定例報告は毎回きちんと出ていたのに、納品物を一度も見ていなかったに、作業する側から見た防ぎ方は最後にやり直しになる人は、最初に納品物の形を見ていないに書いています。
「これくらいでいい」という言葉そのものが悪いわけではありません。ただ、下限と上限のどちらを示したのかが共有されていなければ、同じ言葉から別の完成形を想像します。最低条件、不要な作業、使う目的を分ける方が、察し合うより確実です。