人生のリセットボタンは、どこまで押すかで結果が変わる

人生のリセットボタンが欲しいと思っていても、実際に押せる人はそんなに多くないと思います。仕事も生活も人間関係もつながっているので、一つだけ抜き取るわけにいきません。かといって今のままも無理だから、リセットという言葉が頭に浮かぶわけです。

私はこれについて、一度だけ「部分的に押す」ことをやっています。適応障害での休職です。そして結論から書くと、それはリセットになりませんでした。今回は、なぜ効かなかったのかという話をします。押すかどうかで迷っている人には、この失敗の方が役に立つ気がしています。

なお、休職や復職をどう判断するかは体調と状況によって違います。この記事は私個人の経過なので、診断や治療、復職の可否については主治医や産業医に相談してください。仕事の悩みや心の不調の相談先は、厚生労働省の「こころの耳」でも案内されています。

目次

  1. 休職は一時的なリセットのはずだった
  2. 戻る先が同じなら、リセットにはならない
  3. 自分が押していない部分はどこか
  4. 私は結局、全部押す方へ行った
  5. どこまで押すかを決めるための材料

1. 休職は一時的なリセットのはずだった

休職は、仕事から離れる期間です。原因になっている環境から一時的に距離を取れるので、形としては部分的なリセットに近いと思います。

私の場合も、休み始めて2週間ほどで、普段は穏やかに過ごせるようになりました。この時点だけを見れば、ちゃんと効いています。ただ、上司から届いた復職に関するメールを読んだだけで動悸が起きたので、仕事に対する反応はまだかなり残っていました。そのあたりのことは適応障害の後遺症は意外と根深いかもしれないに書いています。

2. 戻る先が同じなら、リセットにはならない

その後、私は復職しました。ところが、なぜか休職のきっかけになった上司の下へ戻ることになり、結局は数か月でまた働けなくなって退職しています。

これがこの記事で一番書きたいことです。休職で私が押せていたのは「時間」だけで、しんどさの原因になっていた部分は何も押していませんでした。距離を取っている間は落ち着きますが、戻る先が同じなら、戻った時点で元に戻ります。当たり前の話なのですが、休んでいる最中の自分はそこまで考えていませんでした。

リセットが効くかどうかは、押した範囲の中に原因が入っているかどうかで決まります。範囲の外に原因を残したまま押しても、休んだ分の時間しか手に入りません。

3. 自分が押していない部分はどこか

だとすると、押す前に確認しておくべきなのは「何を変えたいか」ではなく「今の案で何が変わらないまま残るか」の方です。

私の場合、変えたかったのは職場と上司でした。休職はそこを変えない制度です。復職の配属が同じなら、実質的には何も変わりません。逆に、体調そのものを立て直したいのであれば、休職は目的に合っています。どちらを求めているのかで、必要な押し方は変わってきます。

ちなみに私は、辞めずに異動を相談するとか、働き方を変えられないか掛け合うといった手前の選択肢を試していません。当時は「もう辞めてやる」という反抗的な気持ちの方が強かったからです。なので、それが効いたかどうかは私には分かりません。ただ、押す範囲を自分で選べる状況なら、そこを検討する余地はあったはずだとは思います。

4. 私は結局、全部押す方へ行った

その後、次の勤務先を決めないまま退職して、4か月の無職期間を経てAIベンチャーへ移りました。全部押した側の結果については人生のリセットボタンを押した後、何が消えて何が残ったかに書いたので、ここでは短く書きます。

環境は本当に入れ替わりました。その代わり、収入がない間に口座残高が減っていく怖さと、社会との接点がなくなる感覚は残ります。押す範囲を広げれば効果も大きくなりますが、生活のリスクも一緒に大きくなる、というだけの話でもあります。

休職から退職、転職までの経過そのものは休職後に復職・退職・転職を経験して考えたことにまとめてあります。

5. どこまで押すかを決めるための材料

私の経験から言えるのは、この三つくらいです。

  • 押した後に戻る場所が今と同じなら、それはリセットにならない。休職でも異動でも、同じ人と同じ仕事に戻るなら結果は変わらないと考えた方がいい。
  • 体調を立て直したいのか、環境を変えたいのかを分けて考える。前者に必要なのは休む時間で、後者に必要なのは戻る先を変えることなので、手段が違う。
  • 家賃も生活費も、どのボタンを押しても消えない。押す範囲を広げるほど、この部分を自分で支える期間が長くなる。

全部を押せる人だけが状況を変えられるわけではないと思います。ただ、部分的に押すなら、原因が押した範囲の中に入っているかどうかは先に確かめた方がいいです。私はそこを確かめないまま復職して、結局もう一度やり直すことになりました。